わたしとバレンタインデー
今週のお題「わたしとバレンタインデー」
私にとって忘れられないバレンタインがある。
まだ独身だった頃のお話。
当時、私の職場では女性から男性へチョコを贈る習慣があった。
もともとは個人で別々に準備していたが、対象となる男性は30名以上。
どうしても小さい物を選ばざるを得ず、ホワイトデーの度に申し訳ない気持ちになっていた。
そこで前年からは資金を出し合い、若手が代表して買い出しに行く事に。
その年もバレンタイン直前の週末、私と職場先輩で地元の百貨店に買い出しに行った。
派遣の女性2人も参加してくれたので参加者は7名。
前年より資金が多く、少し立派なチョコを選ぶことができた。
かなり大きな紙袋2つ分のチョコは車で通勤していた私が会社に持っていくことに。
少しかさばるし重いが、車から職場まで15分くらいだし平気…なはずだった。
なんとバレンタイン当日、大雪で30センチ近い積雪。
積もるほどの雪は数年に1度あるかどうか…という土地なので、もう大混乱。
道路は大渋滞で進まず、あちらこちらで事故が起きている…
結局、目の前で事故が起き身動きが取れなくなって午前は急遽有休扱いに。
やっとのことで会社に到着するも、駐車場から職場までの道のりが険しい。
立駐の階段、駐車場から門を結ぶ歩道橋、会社の敷地内の歩道橋。
どこも踏み固められて凍った雪でかなり滑る。
昼前から再び降り始めた雪は、横殴りになっていた。
雪用の靴など持っていなかったので、せめて滑らないようにとスニーカーを履いていたが効果は全然感じられなかった。
滑る上に水がしみ込んできて、感覚がなくなるほど冷たかった。
お昼休みの時間帯。 いつもは外にランチに行く人や、ランニングする人などを見かけるのだが、吹雪だからか誰もいない。
雪で視界もかすむ中、何度も尻もちをつきながら必死の思いで歩き続けた。
生まれて初めて体験する状況に、私は幼い頃にお再放送か何かで見た『おしん』を思い出していた。
ストーリーも殆ど覚えていないけど、何か主人公みたいだな…などと考えていると、泣きそうな今の状況も楽しめるような気がした。
普段の倍以上の時間をかけ、やっと職場に到着。
雪まみれで大きな紙袋を持って職場に入ってきた私を見て驚く先輩たち。
私は1日有休なのだと思っていた様子。 早く私を暖めてあげないと!と大騒ぎに。
予備の服に着替えてから、女性みんなでチョコを渡して回った。
『今日持ってきてくれたの!?』『私ちゃんが頑張ってくれたんだよー』『ありがとう、大切に食べるね』このやり取りが毎回のように繰り返された。
私は自分の引き受けた役目だったし、こんな天候の中で手伝ってもらうのは申し訳ない。と張り切って一人でチョコを運んだ。
しかし逆に先輩達に責任を感じさせてしまい申し訳ないくらいだった。
みんな暫く、私の体調をかなり心配してくれた。 うっかり咳払いもできないくらいに。
それから毎年、出社時に先輩達が私の車までチョコを取りに来てくれるようになった。
手分けしてチョコを持ち、お母さんみたいに優しい先輩達と話しながら職場まで歩くのが楽しみになった。
因みにその年のホワイトデー、私は防寒具を沢山いただきました。
まだ、何にでも全力だった若い頃の思い出です。